――顧客の力を借りる営業だけが、最後に突き抜ける
1.憧れの “すごい営業マン” 像は、ほぼ作り話だ
SNSを開けば、「こんなクロージングで即決!」「この心理トリガーで契約量産!」――万能営業マンを気取る情報が溢れている。
まるで “営業マンの腕さえあれば誰にでも売れる” かのようだ。
けれど現実の現場は違う。
・こちらの理屈を完璧に伝えても、資金が無い顧客は買わない。
・熱い想いを語っても、そもそもニーズがゼロの相手は動かない。
・タイミングが合わなければ、テクニックは空回りする。
取引が成立するカギの7~8割は、顧客側の “条件” にある。
営業マンが握れるのはせいぜい2~3割。
この事実を直視できないかぎり、努力はいつまでも空回りする。
2.「顧客条件 = 土俵」に乗るまでが勝負の8割
① 購入可能な顧客を“先に”見つける
- ニーズ:痛み(困りごと)を抱えているか、もしくは欲望が顕在化しているか。
- 資金力:買える財布を持っているか。
- タイミング:組織の年度計画や決裁フローが動く時期か。
- 人格・価値観:こちらの提案を前向きに検討できる社風か。
この四つが揃った“土俵”に上がって初めて、営業スキルが活きる。
逆に言えば、土俵に乗らない顧客を一生懸命説得するのは 砂浜で相撲を取るようなもの だ。
② “買いたくない要素” をゼロにする
- 清潔感・言葉遣い・レスポンス速度――ネガティブ要素を消すだけでいい。
- 好かれようと必死にキャラを作るより、“嫌われない”基礎を固める方が圧倒的に早い。
③ 提案は「マニュアル通り」で十分
土俵に上げた顧客に、適切な基本提案を提示する。
派手な奥義は要らない。むしろ基本を外さないことが信頼につながる。
3.“根暗で繊細” な私が成約率トップになれた理由
私は根暗だ。揉め事は怖いし、相手の表情が曇るとすぐ自分を責めた。
でもだからこそ、「買える顧客を選ぶ目」と「微細な拒絶サインを察知する感覚」 が磨かれた。
- トラブルが起こりそうな契約条件は、事前に取り除く。
- 決裁者のわずかな躊躇を読み取り、追加情報を先回り。
- 押し売りクロージングが苦手だからこそ、そもそも断られにくい相手だけに会う。
結果、派手なプレゼンは一切なくても “決まりやすい商談” が自然と増えた。
弱みを無理に克服せず、土俵選びとネガティブ排除に全振り したのが勝因だった。
4.数字が跳ね上がる「三段ロジック」
- 選ぶ ── まず“買える可能性が高い”顧客プロファイルを定義し、そこにリソースを集中。
- 整える── 顧客が不安になる要素(清潔感・言葉・レス)を0に近づける。
- 届ける── 教科書どおりの提案を、教科書どおりの順番で淡々と提示。
営業マンの力 = 2~3割
顧客側の条件 = 7~8割
この比率を腹に落とせば、
「売れないのは自分の才覚がないからだ」という呪いから解放される。
“顧客の力を使う営業” に切り替えた瞬間、数字は一気に突き抜ける。
5.次回予告 ― 具体テクニック編
- “買える顧客プロファイル” の作り方
- 出会い率を5倍にするリストセグメント
- 初回電話で不安を消す「四つの確認」 …etc.
次のコラムでは、この思想を具体的な行動に落とし込む手順を解説する。
自分の2割を最大化し、顧客の8割を活かす――その方法論をお楽しみに。
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